若手社員の声 -2017入社
TBSテレビ 『噂の!東京マガジン』
アシスタントディレクター※2017年現在
山西 創介(2017年度入社 武蔵野美術大学 造形学部藝術文化学科卒業)
あの頃、我が家のリビングにはテレビの前で原稿を広げる、父の姿があった。
私の父は放送作家だった。
そんな父の勧めもあり、美大に進学した私は、アートやデザインと社会の関わり・繋がりについて学び始めた。
そんな大学1年の1月、父が他界した。ずっとテレビの仕事のことばかりを考えていた父は、意識を失う前日にも、「明日、原稿用紙を持ってきて。」と私に頼んでいた。0.9ミリ、少し太めの芯が入ったいつものシャープペンシルさえ、もう、まともに持てなくなっていたのに。
父の部屋には、大量の台本と手書きの原稿用紙だけが遺された。
それらは、父がここに生きていた証になった。
でも、当たり前のように父の名前が流れていた、あの番組のエンドロールからは父の名前が消えた。
もう二度と、父の名前が流れることもない。あたりまえのことだが、すごく、さみしかった。
あれから3年が過ぎ、私はフラジャイルに入社した。放送作家だった父とは違った
アプローチで、私自身も深く、テレビ番組の制作に関わりたいと思ったからだ。
担当となった番組は、『噂の!東京マガジン』。日曜日のお昼、我が家のリビングにいつもあった、テレビ画面の向こう側の世界が、今、私の目の前にある。「いよいよテレビ業界に来た。」という感じだ。この業界の仕事は、決して楽な仕事ではない、という。
でも、そんなことなど、はっきり言って、どうでもいい。その位、やり甲斐を感じられる素敵なお仕事、ここでしか経験できない素敵なお仕事に、期待で胸が膨らむ、この感覚。楽しいぞ!!!
とはいえ、まだまだ駆け出しの新米AD山西創介。
不慣れなことばかりで、先輩ADに助けてもらってのスタジオ収録やロケも、不安で不安で仕方がない。
でも、少しずつ仕事も覚えて、もうすぐADとしては独り立ち?という現状。
『噂の!東京マガジン』では、エンドロールにADの名前は載らない。
早速別番組で、エンドロールに載った同期の名前を見て、少し残念にも思ったが、むしろそれが、「いつか絶対、“この番組”でディレクターになって、自分の名前を載せる!」というモチベーションになる。
だからこそ、よりこの仕事を頑張れる気がしている。初めてエンドロールに名前が載った瞬間が、この番組に関わる人間として、初めてスタート地点に立った瞬間になるのだから。
まずは、そのスタート地点に立つための助走を精一杯、頑張る。
でも、頑張る以上に楽しむ。きっと、制作側が楽しめないと、視聴者だって楽しめないから。
編集室で見た先輩ディレクターの後ろ姿で、父の後ろ姿を思い出した。
テレビ番組制作に、人生を捧げる人。その中にある、制作への情熱、プロ根性。
その全てがとてつもなくカッコよくて、心の底から憧れるし、愛おしい。私もあんな風になりたい。
そう思える、この気持ちを大切に生きていきたいと思う。
そして、そう思えることが、きっと今、私がここに生きている証になる。
この文章は、あの頃の父と、これからの私自身へ。
そして、この業界で働きたいと思っている、今、このページを見ている。
“あなた”への宣誓。